光の中へ

俺はもう光の中に入った、おふくろにも兄貴にも逢ったから安心しろ!
遠藤順子「夫の宿題」PHP研究所(2000)


これは遠藤周作が臨終の際に,妻・順子さんに伝えたメッセージだという.

この6月4日で父が亡くなって丸2年になる.
不幸にも私は当時渡米していて,
遥か彼方のナッシュビルから冥福を祈ったため,
臨終の顔も,死後の顔も拝むことはできなかったのだ.

けれども,その後亡くなった母の最期には立ち会うことが出来た.
骨髄のガン.
晩年は体中が痛み,
入院中の病院内で転倒し,腰骨を折ってからというものは,
その痛みを抑えるためのモルヒネで終始夢現をさまよった.
ミャ~,ゥミャ~..そんな唸り声を上げながら,
手で何かを払いのけようとする.
そんな母を看病しながら,よく涙をこらえたものだった.

さぞ苦しかったろう.
でもその最期は本当に静かで,すぅ~と息が止まり,口から血が溢れ...
家に戻って死化粧をしてもらった母の顔は,
菩薩様のようにも見え,本当に穏やかな顔だったのだ.

私は,母の亡くなるちょうどその日に人間ドックの予約をしていた.
母の様子を見ながら,まだ大丈夫と判断し,
そのキャンセルをしに,ちょっとだけ病院を抜けた.
戻った時にも,まだまだ大丈夫.弟たちの声がした.
けれども...
ほんの数分の後に,息は途切れ,
でもそれは苦しみもがくといった風でなく,
本当にすぅーっと,母は息を引き取ったのだ.

この時,母は,私が戻ってくるのを待っていてくれたのだと確信した.
そしてとてもやさしい顔になり...
まさに,遠藤と同じことを私に伝えたかったのだろうか.

「私はお父さん(前年に逝った私の父)に逢ったからもう大丈夫!」
私の父は,遠藤と同じく病弱で,
私の小さい頃に,何度も病院に入院中の父を訪ねた記憶が残っています.
母は,文句を言いながらも父の世話を焼きっぱなしでした.
また父は,人一倍心配性で,母の姿が少しでも見えなくなると,
どこへ行った,いつ帰ってくる?..と,もう1分でも落ち着いて,
待ってはいられない人でした.
そんな2人は,いまきっと,天国で幸せに暮らしているのでしょう.

死とは,次の世界へ,やさしい光の中への旅立ちなのかもしれませんね.
でもそこへ行くためには,この世で与えられた天命を,
しっかりと全うしなければなりません.
いまを大切に,生かされるままに...

夫の宿題

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